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ただのMarkdownでAIエージェントが乗っ取られる?ダウンロードフォルダの「AGENTS.md」攻撃と今すぐできる対策

著者: ryu | #セキュリティ #AIエージェント #Codex
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こんにちは、インフラエンジニアのryuです。

AIコーディングエージェントを使っている方に質問です。ダウンロードしたファイルを調べてもらうために、ダウンロードフォルダでそのままエージェントを起動したことはありませんか?

2026年10月22日、イスラエルのセキュリティ企業Forever Securityが、ダウンロードフォルダに置かれた「AGENTS.md」というMarkdownファイルを使って、AIコーディングエージェントを乗っ取る攻撃を報告しました。10月28日にはITmediaも「ダウンロードフォルダでAIを使わないで」という見出しで取り上げています。

Forever Securityによると、同社の顧客のおよそ半数が、ダウンロードフォルダの中でコーディングエージェントを動かしていたそうです。決して珍しい使い方ではありません。

この記事では、何が起きたのか、なぜただのテキストファイルが攻撃になるのか、そして自分の環境で今すぐ確認できることを整理します。

何が起きたのか

まずは、公開されている情報を時系列で整理します。

日付 出来事
2026年10月7日 npmの悪性パッケージ「function-color」「function-flag」がOSVに登録される
2026年10月22日 Forever Securityが調査報告を公開
2026年10月25日 BleepingComputerが報道し、ファイルがダウンロードフォルダに保存される部分を独自に確認
2026年10月28日 ITmedia AI+が国内向けに報道

発端は、実際の顧客の端末での出来事でした。作業中のコーディングエージェントが、悪性のnpmパッケージ「function-color」をインストールしようとし、Forever Securityの製品がそれを止めました。

原因を調べたところ、端末のダウンロードフォルダに、エンジニアのメモに見せかけた約13KBの「AGENTS.md」が置かれていました。中身はOpenAIのCodexに向けた指示で、エージェントが読み込むと、悪性パッケージの実行につながる内容だったとされています。

ここで押さえておきたいのは、次の2点です。

  • 顧客の端末では、パッケージのインストールが止められ、コードは実行されていない
  • AGENTS.mdがどうやってダウンロードフォルダに置かれたのかは、分かっていない

つまり「実際に被害が出た事件」ではなく、「実際の端末で見つかった攻撃の仕掛けを、研究者が検証した」という話です。とはいえ、検証の結果は軽視できないものでした。

なぜただのMarkdownが攻撃になるのか

AGENTS.mdとCLAUDE.mdの役割

AGENTS.mdやCLAUDE.mdは、AIコーディングエージェントに向けた「作業の手引き」を書くファイルです。

ファイル 主なツール 書かれる内容の例
AGENTS.md OpenAI Codexなど ビルド方法、テストの実行方法、コードの書き方の決まり
CLAUDE.md Claude Code プロジェクトの構成、よく使うコマンド、注意点

エージェントは起動したフォルダにあるこれらのファイルを自動で読み込み、書かれた内容を作業の前提として扱います。チームの決まりを毎回説明しなくて済む、便利な仕組みです。

問題は、エージェントが「誰がこのファイルを書いたのか」を確かめないことです。プロジェクトのリポジトリにあるAGENTS.mdも、ブラウザが勝手に保存したAGENTS.mdも、同じように読み込まれます。

「読むファイル」が「動かすファイル」になった

これまでMarkdownは、人が読むための文書でした。開いただけで何かが実行されることはありません。

ところが、ファイルの操作やコマンドの実行、設定の変更ができるAIエージェントがこのファイルを読むと、話が変わります。書かれた指示に従ってエージェントが動くので、Markdownが実質的に「実行ファイル」に近い役割を持つようになります。

AGENTS.md攻撃の流れWebページファイルを保存DownloadsAGENTS.mdAIエージェント指示として読み込む設定の書き換え端末全体に影響ただのデータ誰が書いたか分からないブラウザが保存したファイル実行される指示エージェントの権限でコマンドや設定変更が動くここが新しい信頼境界

エージェントが読み込んだ瞬間に、「ただのデータ」が「エージェントの権限で実行される指示」に変わる。この境目が、AIエージェントの時代の新しい信頼境界です。

さらに、BleepingComputerの確認では、Chrome・Edge・Firefoxは既定の設定でファイルをダウンロードフォルダへ保存し、通知を出すだけでした。Webページを開いただけで、知らないうちにAGENTS.mdが置かれる可能性があります。

検証で分かったこと

Forever Securityは、見つかったファイルや自作のファイルを使って、隔離した環境で検証を行っています。

Codexの場合

実際に見つかった悪性のAGENTS.mdを使った検証では、Webページを開くとファイルがダウンロードフォルダに保存され、そのフォルダでCodexを起動すると、エージェントが設定ファイル「~/.codex/config.toml」を書き換え、悪性パッケージを実行しました。成功率は90%を超えたとされています。

注意したいのは、書き換えられる設定が端末全体に効くことです。いったん書き換えられると、ダウンロードフォルダ以外で起動したCodexでも、攻撃者のサーバーが読み込まれるようになります。

Claude Codeの場合

Claude Codeについては、研究者が自作したCLAUDE.mdで検証しています。内容は、設定ファイル「.claude/settings.json」の通信先(ANTHROPIC_BASE_URL)を、研究者が用意したサーバーへ向けさせるものでした。

項目 結果
設定の書き換え 約50%で成功
通信先の変更で起きたこと OAuthトークンが研究者のサーバーに届き、コードを実行せずにアカウントを乗っ取れることを確認
同じ作業中でのコード実行 約5回に1回

通信先を書き換えられると、エージェントとAIモデルのやり取りが攻撃者のサーバーを経由します。研究者は、次回の起動時に攻撃者のサーバーがサンドボックスを無効にするツールの呼び出しを返せば、コードの実行まで進めることも示しています。

なお、報道によって数字の書き方が少し異なります。この記事では、一次情報であるForever Securityの報告の数字を使っています。

「AIのバグ」ではないという指摘

この件で興味深いのは、研究者が「OpenAIやAnthropicが修正すべき点は何もない」と述べていることです。

エージェントは、起動したフォルダの手引きを読み、その指示に従って作業する、という設計どおりに動いただけです。両社とも、エージェントはプロジェクトのフォルダで起動し、ダウンロードフォルダやホームディレクトリのような広い場所では起動しないように案内しています。

これは、OWASPがLLMアプリケーションのリスクとして挙げている2つの問題が重なったものと考えられます。

リスク 今回の当てはまり方
間接的なプロンプトインジェクション 人ではなく、外から来たファイルが指示を紛れ込ませた
過剰な権限(Excessive Agency) エージェントが設定変更やパッケージのインストールまでできた

つまり、ツールのアップデートを待てば解決する問題ではありません。使う側が「どこで起動するか」「どこまでの権限を与えるか」を決める必要があります。考え方は、すべてを信用せず都度確認するゼロトラストと同じです。

自分の環境で今すぐ確認したいこと

ここからは、macOSやLinuxのターミナルで確認できるコマンドを紹介します。どれも中身を見るだけで、何も変更しません。

1. ダウンロードフォルダに指示ファイルがないか

自分で置いた覚えのないAGENTS.mdやCLAUDE.mdがないかを探します。

find ~/Downloads -maxdepth 3 \( -iname 'AGENTS.md' -o -iname 'CLAUDE.md' \) -ls

見つかった場合は、エージェントで開かず、テキストエディタで中身を確認しましょう。設定ファイルの書き換え、パッケージのインストール、確認を省略させる指示などが書かれていれば要注意です。

2. Codexの設定が書き換えられていないか

覚えのないMCPサーバーの登録や、通信先の変更がないかを確認します。

ls -l ~/.codex/config.toml
grep -nE '^\[mcp_servers|base_url' ~/.codex/config.toml

1行目で最終更新日時を見ておくと、自分が触っていない日に変わっていないかが分かります。

3. Claude Codeの設定が書き換えられていないか

ユーザー全体の設定と、作業中のプロジェクトの設定の両方を確認します。

grep -n 'BASE_URL' ~/.claude/settings.json ~/.claude/settings.local.json .claude/settings.json .claude/settings.local.json 2>/dev/null
env | grep -i 'anthropic_base_url'

社内のゲートウェイなど、自分で設定した通信先以外が出てきた場合は、書き換えを疑います。

4. 悪性パッケージが入っていないか

今回の攻撃で使われたnpmパッケージが端末にないかを確認します。

npm ls -g --depth=0 2>/dev/null | grep -E 'function-(color|flag)'
find ~ -type d \( -name 'function-color' -o -name 'function-flag' \) -path '*node_modules*' 2>/dev/null

findやgrepの使い方に自信がない方は、「Linuxコマンド入門」もあわせて読んでみてください。

対策の優先順位

対策は、すぐにできるものから順に進めるのがおすすめです。

優先度 対策 ポイント
今すぐ ダウンロードフォルダやホームディレクトリでエージェントを起動しない 調べたいファイルは専用の作業フォルダに移してから扱う
今すぐ 自分で書いていないAGENTS.md・CLAUDE.mdは、読ませる前に中身を見る 他人のリポジトリをクローンしたときも同じ
今すぐ 承認の確認とサンドボックスを有効にしておく 確認を省略する設定は、信頼できる環境だけにする
早めに 設定ファイルの変更を定期的に確認する MCPサーバー、プロキシ、APIの通信先を見る
早めに 信頼できないコードは、仮想マシンやコンテナで試す 本番の認証情報がない環境を使う
組織で エージェントの起動場所や権限の決まりを作る 端末の監視で、エージェントが起動したプロセスも記録する

中でも効果が大きいのは、1つ目の「起動する場所を決める」ことです。今回の攻撃は、ダウンロードフォルダで起動しなければ成立しません。

痕跡が見つかったら

設定の書き換えや悪性パッケージが見つかった場合は、認証トークンが盗まれた前提で動きます。

  1. エージェントの利用を止め、ネットワークから切り離すかを判断する
  2. 書き換えられた設定ファイルと不審なAGENTS.mdを、消さずに保存しておく
  3. OpenAIやAnthropicのアカウントからログアウトし、OAuthトークンやAPIキーを失効させて再発行する
  4. 同じ端末にあるGitHubやクラウドの認証情報も変更する
  5. 組織で使っている場合は、セキュリティ担当者に連絡する

OSVの情報では、function-flagが入った端末は「完全に侵害されたものとして扱うべき」とされています。設定を元に戻すだけで終わりにせず、端末の初期化まで含めて検討しましょう。

痕跡の保存や調べ方の考え方は、「php2shellで攻撃されていないか確認する方法」でも解説しています。

InfraAcademyで「攻撃の仕組み」から理解しよう

今回の攻撃は、Linuxのファイルやプロセス、権限の仕組みを知っていると、何が危ないのかがすぐに分かります。「エージェントがどのユーザーの権限で動くのか」「設定ファイルはどこにあるのか」は、AIを使う前に押さえておきたい基本です。

InfraAcademyでは、ブラウザ上でLinuxのコマンドを実行しながら、ファイルの探し方や権限の確認を練習できます。学ぶ順番はLinuxの学習ロードマップにまとめています。

また、プロンプトインジェクションのような新しい攻撃も含めて、攻撃の手口と守り方を基礎から学びたい方には、セキュリティ入門講座がおすすめです。攻撃者の動き方から防御・検知・インシデント対応までを、演習環境で手を動かしながら学べます。

まとめ

ダウンロードフォルダのAGENTS.md攻撃のポイントを振り返ります。

  • ダウンロードフォルダに置かれたAGENTS.mdで、AIエージェントが設定を書き換える攻撃が報告された
  • 実際の顧客端末で見つかったが、パッケージのインストールは止められ、侵入経路は分かっていない
  • 検証では、Codexで90%以上、Claude Codeの設定書き換えで約50%の成功率だった
  • エージェントは設計どおりに動いただけで、ツールの修正では防げない
  • まずは「ダウンロードフォルダで起動しない」「知らない指示ファイルを読ませない」を徹底する
  • 設定ファイルと悪性パッケージの有無は、この記事のコマンドで今すぐ確認できる

AIエージェントにとっては、Markdownも実行される指示になります。便利さと引き換えに、どこで、どんな権限で動かすかを決めるのは使う側の役目です。周りでAIエージェントを使っている方にも、ぜひ共有してください。

参考資料

本記事は、2026年10月29日時点の公開情報をもとに作成しています。

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この記事を書いた人

ryu

株式会社InfraAcademy 代表 / エンジニア

大手メーカーでインフラエンジニアとして勤務した後、ベンチャー企業・スタートアップでフルスタックエンジニアを経験。その後、起業し学習サービス「InfraAcademy」を運営しています。
保有資格:ネットワークスペシャリストなど 運営会社:株式会社InfraAcademy

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