こんにちは、インフラエンジニアのryuです。
「未経験からでも、インフラエンジニアになれますか?」
この質問を、私は本当にたくさん受けてきました。プログラミングの経験もない、文系出身で数学も得意じゃない。そんな自分がサーバーやネットワークを扱う仕事なんて、務まるのだろうか。そう不安に思う気持ち、よく分かります。
結論から言うと、なれます。ただし、やみくもに手を出すと遠回りになります。
今日は、未経験からインフラエンジニアを目指すあなたのために、「何を」「どの順番で」学べば失敗しないのか、その道すじを地図のように描いてみます。読み終わるころには、明日から何をすればいいかがはっきり見えているはずです。
そもそも未経験からインフラエンジニアは目指せるの?¶
まず、いちばん気になる「本当に目指せるのか」からお話しします。
答えははっきりしています。インフラエンジニアは、未経験からのスタートがしやすい職種のひとつです。
理由のひとつは、人手が足りていないこと。経済産業省の調査では、日本のIT人材は将来的に大きく不足すると見込まれています。2030年には、最大でおよそ79万人が足りなくなるという試算が示されました。
つまり、育てて戦力にしたい企業がたくさんあるということです。未経験者向けの入り口が、他業種より広く開いているのです。
もうひとつの理由は、インフラの仕事が「積み上げ型」だからです。
Webアプリ開発のように流行の言語やフレームワークが次々と入れ替わる世界とは少し違います。ネットワークやサーバーの土台になる考え方は、10年前も今も大きく変わりません。一度しっかり基礎を身につければ、それが長く効いてくる。だから未経験からでも、腰を据えて学べば追いつけます。
とはいえ、「誰でも簡単になれる」わけではありません。地図を持たずに歩き出すと、遠回りしてしまう。だからこそ、道すじが大事なのです。
インフラエンジニアってどんな仕事?未経験がまず知るべきこと¶
道すじを描く前に、目的地の姿をはっきりさせておきましょう。
そもそもインフラエンジニアとは、どんな仕事なのでしょうか。ひとことで言えば、ITサービスが動くための「土台」を作り、守る人です。
私たちが普段スマホで見ているアプリやWebサイト。あれは、目に見えないところで動くサーバーやネットワークの上に乗っています。土台がなければ、どんなに立派なアプリも一瞬たりとも動きません。
家に例えるなら、アプリ開発者が内装や家具を作る人だとすれば、インフラエンジニアは基礎や柱、水道や電気を整える人です。地味に見えて、いちばん止められない仕事です。
サーバー・ネットワーク・クラウドという3本柱¶
インフラエンジニアが扱う領域は、大きく3つに分けられます。
ひとつめがサーバー。サービスの計算や処理を担う「コンピューターの本体」で、多くはLinuxというOSで動いています。
ふたつめがネットワーク。サーバー同士や、利用者とサーバーをつなぐ「道路」の部分です。データがどの道を通って届くのか、その仕組みを設計します。
みっつめがクラウド。近年はAWSに代表されるクラウド上に、サーバーもネットワークもまとめて構築するのが主流になりました。
この3つは、バラバラの知識ではありません。互いにつながっています。まずはこの全体像を、頭の片隅に置いておいてください。学びの地図を俯瞰したいときは、インフラエンジニアのロードマップを先にながめておくと、いま自分がどこを歩いているのか迷いにくくなります。
最初は「運用・監視」から始まることが多い¶
未経験で入社した場合、いきなり大規模なシステムを設計することはまずありません。
多くの人が、まず「運用・監視」という工程からキャリアを始めます。すでに動いているシステムがちゃんと動き続けているかを見守り、異常があれば気づいて対応する。いわば、システムの見張り番です。
地味に思えるかもしれません。でも、この段階で「正常な状態とはどういうものか」を体で覚えることが、後の設計や構築にすべて効いてきます。焦らず、ここを大切にしてほしいと思います。
考えてみてください。健康診断で異常に気づけるのは、普段の正常な数値を知っているお医者さんです。システムも同じで、正常なときの姿を知らなければ、異常にも気づけません。運用・監視は、その「正常」を体に叩き込む、いちばんの近道なのです。
だから、最初の配属が運用だったとしても、決して落ち込まないでください。そこは通過点ではなく、しっかりした土台を作るための大事な土壌です。
未経験からの学習ロードマップ:何を、どの順で学ぶか¶
さて、いよいよ本題です。目的地が見えたところで、そこへ向かう道すじを描きましょう。
未経験からの学習は、次の順番で進めるのがおすすめです。土台から順に積み上げていくイメージです。
| ステップ | 学ぶこと | ざっくりの目安 | ゴールの目印 |
|---|---|---|---|
| 1 | Linuxの基礎 | 1〜2か月 | 基本コマンドが手に馴染む |
| 2 | ネットワークの基礎 | 1〜2か月 | IPアドレスとルーティングが分かる |
| 3 | クラウド(AWS) | 1〜2か月 | 自分でサーバーを立てられる |
なぜこの順番なのか。ひとつずつ理由をお話しします。
ステップ1:まずはLinuxに触れる¶
最初の一歩は、Linuxです。
先ほど話したとおり、サーバーの多くはLinuxで動いています。インフラエンジニアにとって、Linuxのコマンド操作は、料理人にとっての包丁の使い方のようなもの。避けては通れません。
とはいえ、身構える必要はありません。最初はlsでファイルを一覧したり、cdで移動したり、そんな基本操作から始めれば十分です。毎日少しずつ黒い画面に触れて、手に馴染ませていく。それだけで景色が変わります。
具体的な最初の一歩は、Linux初心者向けのコマンド入門から始めてみてください。まずは10個のコマンドを覚える、それくらいの気軽さでいいのです。
ステップ2:ネットワークの「なぜ」を理解する¶
Linuxに慣れてきたら、次はネットワークです。
ここは未経験者がつまずきやすい山場でもあります。IPアドレス、サブネット、ルーティング、DNS。カタカナと数字が並んで、拒否反応が出る人も少なくありません。
でも、大丈夫です。ネットワークは、突きつめれば「データという手紙を、どうやって正しい相手に届けるか」という郵便の仕組みです。宛先を書いて、経路を選んで、届ける。この身近なイメージを持つだけで、ぐっと分かりやすくなります。
何から手をつけるか迷ったら、ネットワークの学び方を入り口にするとよいでしょう。用語をひとつずつ、たとえ話で結びつけながら進めるのが遠回りしないコツです。
ステップ3:クラウド(AWS)で全部をつなげる¶
土台の2つが見えてきたら、いよいよクラウドです。
いまのインフラの現場は、AWSをはじめとするクラウドが中心です。しかもうれしいことに、クラウドは自分のパソコンとインターネットさえあれば、無料枠の範囲で実際に触って学べます。
ここまでで学んだLinuxとネットワークの知識が、クラウド上で一気につながる瞬間が来ます。「あのとき覚えたIPアドレスの話は、このためだったのか」と。その手応えは、学習を続ける大きな燃料になります。
クラウドの勉強の進め方はAWSの学習法にまとめてあるので、ステップ3に入るタイミングでのぞいてみてください。
資格は必要?未経験の背中を押す3つの資格¶
学習を進めていくと、必ず出てくる疑問があります。「資格って、取ったほうがいいんですか?」
私の答えは、「未経験なら、取る価値は大きい」です。
理由はシンプルで、未経験者にはアピールできる実務経験がないからです。そのぶん、資格が「基礎はちゃんと勉強しました」という客観的な証明になってくれます。学習の目標にもなり、ペースメーカーの役割も果たします。
未経験の入り口として定番なのが、次の3つです。それぞれの特徴を表にまとめました。
| 資格 | 主催 | 学ぶ領域 | ひとことメモ |
|---|---|---|---|
| LPIC / LinuC | LPI / LPI-Japan | Linux | サーバー職に効く定番。レベル1から |
| CCNA | シスコシステムズ | ネットワーク | ネットワーク職の登竜門。有効期間は3年 |
| 基本情報技術者 | IPA(情報処理推進機構) | IT全般 | 国家試験。通年でいつでも受験できる |
CCNAは、ネットワーク領域を目指すなら王道の資格です。シスコの認定はレベルごとに有効期間が定められていて、アソシエイトレベルの認定は合格から3年間有効とされています。詳しい勉強の進め方はCCNAの勉強法を参考にしてください。
Linux方面を伸ばしたいなら、LPICが定番です。こちらもLPICの勉強法にまとめてあります。
基本情報技術者は、IT全般の土台を国家資格として証明できるのが強みです。いまはCBT方式で通年受験できるので、準備が整い次第、自分のタイミングで挑戦できます。
ただし、ひとつだけ注意です。資格は「取ること」がゴールではありません。資格の勉強で得た知識を、次に話す「手を動かす学習」で実際に使ってこそ、本物の力になります。
手を動かす学習とポートフォリオで差をつける¶
未経験からの転職で、意外と差がつくのがここです。
参考書を読んで資格を取るだけの人はたくさんいます。だからこそ、「自分で実際に環境を作ってみた」という経験が、あなたを一歩前に出してくれます。
たとえば、AWSの無料枠で小さなサーバーを1台立ち上げて、そこにWebサーバーを入れて、自分の作ったページを公開してみる。たったこれだけでも、学びの深さがまるで変わります。
イメージがわくように、ごく簡単な例を挙げてみます。Linuxのサーバーにログインして、Webサーバーを動かす、その最初の一歩はこんな感じです。
# サーバーにSSHでログインする
ssh user@your-server-ip
# パッケージを最新にして、Webサーバー(nginx)を入れる
sudo apt update
sudo apt install -y nginx
# 起動して、自動起動も有効にする
sudo systemctl start nginx
sudo systemctl enable nginx
これだけで、あなたのサーバーがWebページを配信し始めます。ブラウザでサーバーのアドレスを開いて、初期ページが表示されたときの感動は、ぜひ自分の目で味わってほしいと思います。
「読んで理解した」と「作って動かせた」の間には、大きな川が流れています。その川を渡った経験こそが、面接で語れる本物の武器になります。
そして、こうして手を動かした記録は、必ずポートフォリオとして残しておきましょう。構成図を描き、つまずいた点と解決の過程をメモに残す。それが、未経験のあなたの「実績」になります。まとめ方はインフラエンジニアのポートフォリオを参考にしてみてください。
転職活動でつまずかないために¶
学習とポートフォリオがそろってきたら、いよいよ転職活動です。ここで気持ちの部分を少しだけ。
未経験の転職では、「完璧になってから応募しよう」と考えすぎないことが大切です。
すべてを理解してから動こうとすると、いつまでも一歩が踏み出せません。現場に入れば、分からないことは山ほど出てきます。それが普通です。企業が未経験者に求めているのは、完璧な知識ではなく、「学び続けられる姿勢」と「基礎をちゃんと積んだ土台」です。
面接では、知識の量よりも、あなたがどう学んできたかの物語が効きます。なぜインフラに興味を持ったのか。どこでつまずき、どう乗り越えたのか。その道のりを自分の言葉で語れるなら、それだけで十分に強い。
未経験者を採る企業は、実のところ「即戦力」を期待していません。期待しているのは、伸びしろです。半年前は黒い画面すら怖かった人が、今では自分でサーバーを立てられるようになった。その変化のスピードこそが、いちばんの説得力になります。だから、これまで積み上げてきた小さな一歩の記録を、自信を持って見せてください。
独学が不安なら、体系立てて学べる環境に頼るのも賢い選択です。私が関わっているInfraAcademyでも、Linux・ネットワーク・クラウドを未経験者が迷わない順番で学べるように設計しています。まずはLinuxのロードマップから、地図に沿って歩き出してみてください。ネットワークへ進みたくなったらネットワークのロードマップが続きの道になります。
ひとりで抱え込まず、道しるべを使う。それも立派な戦略です。
まとめ:地図を持って、今日の一歩を踏み出そう¶
長くなったので、今日の要点を振り返ります。
未経験からインフラエンジニアは、十分に目指せます。人材は不足していて、仕事は積み上げ型で基礎が長く効く。追い風は吹いています。
学習は、Linux → ネットワーク → クラウド の順で土台から積むのが遠回りしないコツでした。資格は未経験の客観的な証明になり、手を動かした経験とポートフォリオが、あなたを一歩前に出してくれます。
そして何より、完璧を待たずに動き出すこと。分からないことがあるのは、恥ずかしいことではありません。学び続ける姿勢こそが、この仕事でいちばん求められる資質です。
地図は、もう手の中にあります。あとは、今日の小さな一歩を踏み出すだけ。まずは黒い画面を開いて、コマンドをひとつ叩いてみる。その一歩が、半年後のあなたを大きく変えているはずです。応援しています。