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エンジニアが採れないなら育てる。社内人材をインフラエンジニアにするリスキリング設計

| #インフラ #人材育成 #法人研修
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こんにちは、インフラエンジニアのryuです。

いきなりですが、採用担当や育成担当の方に質問です。インフラエンジニアの求人を出して、思うように応募が集まっている会社は、いまどれくらいあるでしょうか。

「求人は出しているけれど、経験者はまず来ない」「たまに来ても、他社と取り合いになって条件で負ける」——そんな話を、あちこちで耳にします。

採れないものを追いかけ続けるのは、しんどいものです。そこで最近あらためて注目されているのが、外から採るのではなく、いま社内にいる人を育てるという発想、つまり リスキリング(学び直しによる職種転換) です。

今日は、情シスや他部署の社員を、インフラを担える人材へと育て直すにはどう設計すればいいのか。制度や助成金の話も交えながら、研修担当者の方が明日から動ける形でお話しします。

そもそもリスキリングって、何のこと?

言葉がひとり歩きしている感もあるので、まず意味をそろえておきましょう。

リスキリングとは、ざっくり言えば、働きながら新しい職種・役割に必要なスキルを身につけ直すことです。趣味の学び直しではなく、あくまで仕事で使うスキルを、会社の戦略とセットで習得していく取り組みを指します。

ここが大事なところで、リスキリングは個人が勝手にがんばる話ではありません。会社が「この分野の人材が足りないから、この人にここを学んでもらう」と旗を立て、そのための時間と環境を用意して初めて回り出す、組織ぐるみの取り組みです。だから、育成担当や経営の関与が欠かせません。

似た言葉に「リカレント教育」がありますが、あちらは一度仕事を離れて学び直すニュアンスが強い言葉です。リスキリングは、仕事を続けたまま社内で学びなおす、というところが大きな違いだと考えると分かりやすいでしょう。

引っ越しにたとえてみます。転職での経験者採用は、すでに家具も生活も整った人にそのまま入居してもらうようなもの。一方リスキリングは、いま住んでいる人の部屋を、新しい暮らしに合わせて模様替えしていくイメージです。土地勘のある人が、部屋の使い方だけを変えていく。だから馴染みが早い、という利点があります。

なぜ「採る」より「育てる」に目が向くのか

理由はシンプルで、外から採るのが本当に難しくなっているからです。

経済産業省が公表した「IT人材需給に関する調査」では、IT人材の不足は将来さらに広がり、需要の伸び方によっては2030年に最大で約79万人が不足すると試算されています。パイそのものが足りないのですから、各社が同じ経験者を奪い合う構図は、そう簡単には変わりません。

しかも、この奪い合いは体力勝負になりがちです。給与も待遇も引き上げ続けなければ振り向いてもらえず、ようやく採れても、また別の会社に条件で引き抜かれる。採用だけに頼ると、こうした消耗戦から抜け出せなくなります。

奪い合いに参戦し続けるのか、それとも自社で人を育てる仕組みを持つのか。後者に舵を切る会社が増えているのは、ある意味で自然な流れだと言えます。

国もリスキリングを後押ししている

この動きは、企業の自助努力だけの話ではありません。

政府は2022年に、今後5年間で総額1兆円規模をリスキリング支援に投じる方針を打ち出しました。これは補助金や企業の教育投資などを含めたパッケージ全体の規模感ですが、国として「学び直しを本気で支える」というメッセージにはなっています。

つまり、社内人材の育成に踏み出す会社にとって、追い風と使える制度がそろいつつある。この点は、後半の助成金のところで具体的に触れます。

社内の誰を、インフラ人材の候補にできる?

「育てるといっても、うちにそんな人いるの?」と思われるかもしれません。ですが、意外と身近なところに候補はいます。代表的な3つの入り口を挙げてみます。

一つ目は、情報システム部門やヘルプデスクの担当者です。すでにPCやネットワーク、社内サーバーに日々触れていて、トラブル対応の勘所も持っている。土台があるぶん、インフラの体系的な知識を上乗せする形で伸ばしやすい層です。

二つ目は、他部署でITに関心が強い社員です。営業事務でExcelのマクロを組んでいた人、現場で業務改善ツールを触っていた人など、「手を動かすのが好き」なタイプは、動機さえ合えば化けることがあります。

三つ目は、入社数年目の若手総合職です。配属先が決まりきっていない段階なら、本人の希望とすり合わせながらインフラへ寄せていく余地があります。会社の事業を一度経験しているぶん、「なぜこのシステムが必要なのか」を業務の側から理解している強みもあります。

いずれの入り口にも共通するのは、ゼロからの未経験採用と違って、社内の事情や人間関係をすでに知っているという点です。技術さえ乗せれば、現場にすっと溶け込める。この立ち上がりの速さは、外部採用にはなかなか出せない価値だと言えるでしょう。

もちろん、全員が向いているわけではありません。大事なのは、本人が納得して手を挙げているかどうか。会社都合で無理に配置転換をすると、学びが「やらされ仕事」になってしまい、続きません。

リスキリングは、本人の意思と会社の戦略が重なる一点を見つける作業だと考えるとうまくいきます。片方だけでは、どこかで息切れします。

失敗しないリスキリングの設計図

では、実際にどう進めればいいのか。順番を間違えると空回りするので、4つのステップに分けて整理します。

ステップ1:ゴールと必要スキルを言葉にする

最初にやるべきは、期間を決めることでも教材を選ぶことでもありません。このリスキリングで、最終的に何ができる人になってほしいのかを言葉にすること です。

「サーバーの構築と運用を一人で回せる」「クラウド上に簡単なWeb環境を作れる」といった具合に、ゴールを具体的な行動で描きます。ゴールが曖昧なままだと、教材選びも進捗確認も、すべてがぶれてしまいます。

このとき役立つのが、経済産業省とIPAが策定した「デジタルスキル標準(DSS)」です。DXに関わる人材の役割や必要スキルが整理されているので、自社のゴールを言語化するたたき台として使えます。ゼロから作らず、公的な物差しに寄せておくと、社内の合意も取りやすくなります。

必要なスキルを洗い出したら、下のように大枠でマッピングしておくと、学ぶ順番が見えてきます。

領域 学ぶこと 目安
Linux基礎 コマンド操作・ファイル権限・プロセス管理 最初の1〜2ヶ月
ネットワーク IPアドレス・ルーティング・DNSの基礎 並行して学習
クラウド 仮想サーバーの作成・ストレージ・権限管理 基礎のあと
運用・監視 ログの見方・バックアップ・障害対応 実務と並行

学習の入り口としては、InfraAcademyのように分野別のロードマップがある教材を使うと、この「学ぶ順番」で迷わずに済みます。まずは土台のLinuxロードマップネットワークのロードマップから始めるのが定番です。より広い全体像はインフラエンジニアのロードマップでつかめます。

ステップ2:学ぶ時間を「業務」として確保する

設計でいちばんつまずきやすいのが、ここです。

「あとは各自でがんばって」と本人任せにすると、まず続きません。日々の業務に追われて、学習は後回しになる。これは本人のやる気の問題ではなく、時間が業務に組み込まれていないことの問題です。

だから、週に何時間は学習にあてる、という時間を業務として堂々と確保することが欠かせません。就業時間内に学習枠を設け、上司もそれを応援する。この後ろ盾があるかどうかで、定着率は大きく変わります。

ステップ3:手を動かす場を用意する

知識をインプットするだけでは、インフラは身につきません。読んで分かった気になっても、いざ自分でサーバーを立てようとすると手が止まる、というのはよくある話です。

ですから、実際に手を動かせる環境を必ず用意します。クラウドの無料枠や検証用の環境で、小さくてもいいので「自分で作って、壊して、直す」経験を積ませる。学んだことを試せる砂場があるかどうかが、伸びを左右します。

学習の進め方や具体的なコマンドの入り口は、Linuxコマンドの初心者向け解説ネットワークの始め方といった記事から、本人が自走できるようにしておくとよいでしょう。

ステップ4:伴走役をつけて、孤立させない

最後に、ひとりで学ばせないことです。

大人の学び直しは、想像以上に孤独になりがちです。分からないことがあっても誰にも聞けず、少しずつ心が折れていく。これを防ぐのが、質問できる相手、つまり伴走役の存在です。

必ずしも専任のベテランを張り付ける必要はありません。少し先を行く先輩が、週に一度でも進捗を一緒に振り返るだけで、脱落はぐっと減ります。この考え方は新人育成にも共通していて、メンター制度による支援の設計がそのまま参考になります。

伴走役の役割は、答えを教えることそのものではありません。むしろ「何が分からないのかを一緒に言葉にする」ことのほうが大切です。学び始めの人は、つまずいてもどこでつまずいたのかを自分で説明できないことが多い。そこを整理してあげるだけで、次の一歩が踏み出せるようになります。

使える公的支援:人材開発支援助成金を知っておく

「育てるのはいいけれど、コストが気になる」——当然の心配だと思います。

そこで押さえておきたいのが、厚生労働省の人材開発支援助成金です。従業員に職務に関連した訓練を実施した企業に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成してくれる制度です。

DXやリスキリングの流れを受けて、この助成金は年々見直されています。2025年度の改正では、訓練中の賃金助成が1人1時間あたり引き上げられ、複数コースで申請様式が共通化されるなど、使いやすくする方向に動いています。

主なコースを、ざっくり整理しておきます。

コース ねらい
人材育成支援コース 職務に関連した基礎的・専門的な訓練を幅広く支援
人への投資促進コース デジタル人材など高度な訓練を後押し
事業展開等リスキリング支援コース 新分野への展開に向けた大規模な学び直しを支援

制度の細かい要件は年度で変わりますし、申請には計画書の事前提出などの手順があります。使えるかどうかは、必ず厚生労働省の公式ページや管轄の労働局で最新情報を確認してください。捏造された「絶対もらえる」情報に飛びつかず、一次情報にあたるのが鉄則です。

こうした支援も含めて、社内育成を仕組みとして走らせたいときは、伴走型の法人研修を組み合わせるのも一つの手です。InfraAcademyでも、学習の進捗管理まで含めた法人向けプランをご用意しています。自社だけで抱え込まず、外の仕組みを部品として使う発想も持っておくとよいでしょう。

やりがちな失敗と、その回避策

最後に、リスキリングでつまずきやすいポイントを、回避策とセットでまとめておきます。

一つ目は、ゴールを決めずに教材だけ与えてしまうこと。何ができればいいのかが曖昧だと、本人も何を目指せばいいか分からず、学びが漂流します。ステップ1のゴール設定は、地味ですが最重要です。

二つ目は、時間を確保しないこと。「意欲があればスキマ時間でできるはず」という思い込みは、たいてい裏切られます。時間は、意欲ではなく仕組みで守るものです。

三つ目は、完璧を目指しすぎること。最初から一人前を求めると、本人も教える側も苦しくなります。小さくできることを増やし、少しずつ任せる範囲を広げる。この積み重ねが、結局はいちばんの近道になります。

もう一つ付け加えるなら、成長を本人だけの努力として片づけないことです。学びの成果が給与や役割にきちんと反映される見通しがあると、モチベーションは長続きします。逆に「がんばっても何も変わらない」と感じさせてしまうと、せっかく身につけたスキルを持って、他社へ転職されてしまいかねません。育てたあとの処遇まで含めて、リスキリングだと考えておきたいところです。

まとめ

インフラ人材が採れない時代に、社内の人を育てるという選択肢を、今日は整理してきました。

要点を振り返っておきましょう。IT人材は将来的に大きく不足すると見込まれ、外から採るだけでは追いつかない。だからこそ、情シスや他部署の社員をインフラ人材へ転換するリスキリングが現実的な一手になります。

成功のカギは、ゴールを言葉にすること、学ぶ時間を業務として守ること、手を動かす場を用意すること、そして孤立させない伴走をつけること。この4つでした。あわせて、人材開発支援助成金のような公的支援も上手に使いたいところです。

いる人材を活かして育てるのは、遠回りに見えて、実は自社に根を張る人を増やす一番確かな方法かもしれません。まずは「誰を、どこまで育てるか」を一枚の紙に書き出すところから、始めてみてはいかがでしょうか。

参考記事

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この記事を書いた人

ryu

InfraAcademy運営 / エンジニア

エンジニア歴10年。Linux、ネットワーク、クラウドを中心に、実務で役立つインフラ技術を初心者にもわかりやすく解説しています。

X: @ryu63614894

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