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研修は受けたのに現場で動けない。インフラ新人の学びを戦力に変える『研修転移』の設計

| #インフラ #新人研修 #育成
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こんにちは、インフラエンジニアのryuです。

新人研修を任されている方に、ひとつ質問です。手をかけて研修を受けさせたのに、現場に戻ったら結局これまでと変わらない——そんな経験は、ないでしょうか。

研修中はちゃんと理解していたように見えた。アンケートの満足度も悪くなかった。なのに、いざ現場に配属されると、覚えたはずの手順を使わず、いつものやり方に戻ってしまう。

これは、けっして珍しい話ではありません。そして多くの場合、原因は新人本人のやる気や能力ではありません。

問題は、「研修で学んだことを、現場でどう使わせるか」までを設計していないこと。育成の世界では、この「学びが現場に根づくかどうか」を研修転移という言葉で呼びます。

今日は、この研修転移という考え方を軸に、インフラ新人の学びをちゃんと戦力に変えるための組み立て方をお話しします。研修担当者やOJT担当の方に、明日から見直せる形でまとめました。

研修は「受けさせて終わり」になっていないか?

まず、よくある光景を思い浮かべてみましょう。

新人が入ってくる。外部研修に3週間送り込む。戻ってきたら現場へ配属する。あとはOJTでよろしく——。ここまでを「研修をやった」と考えてしまっていないでしょうか。

たとえるなら、これは教習所に通わせただけで、公道の運転はぶっつけ本番、というのに近い状態です。教習所でハンドルの握り方を習っても、実際の道で走らせて、隣で助言してもらう時間がなければ、なかなか一人前のドライバーにはなりません。

研修は、あくまで学びの入り口です。そこで得た知識やスキルが現場の行動に変わって、はじめて「育成できた」と言えます。

ところが現実には、研修と現場が分断されていることが多い。研修は研修会社に丸投げ、現場は現場で忙しい、その間をつなぐ人がいない。だから、せっかくの学びが宙に浮いてしまうのです。

しかも、研修にはそれなりのコストがかかっています。受講料だけでなく、その間に本人が現場で働けない機会損失も含めれば、決して小さな投資ではありません。そのお金と時間をかけたのに現場で活かされないとすれば、これほどもったいない話はありません。

この「研修と現場のあいだの断絶」を埋めるのが、研修転移という発想です。研修を投資として回収するために、避けて通れないテーマだと言えます。

「研修転移」って、そもそも何なのでしょうか?

言葉は聞き慣れないかもしれませんが、中身はとてもシンプルです。

研修転移の研究をまとめた中原淳氏らの著書では、研修転移とは「研修で学んだことが、仕事の現場で一般化され役立てられ、かつその効果が持続されること」と定義されています。

ポイントは3つあります。学んだことが現場で使われること。特定の場面だけでなく応用が効くこと。そして一時的ではなく続くこと。この3つがそろって、はじめて研修が投資として意味を持ちます。

裏を返せば、研修を受けた直後は使えても、1ヶ月後には元通り、という状態は「転移していない」わけです。

満足度が高くても、行動が変わらない

やっかいなのは、研修の満足度と、現場での行動変化が、必ずしも一致しないことです。

人材サービスのエン・ジャパンも、研修そのものへの満足度は高く、必要な知識も学べているのに、現場での行動が変わっていない、という点を研修の課題として挙げています。

「良い研修だった」という感想と、「現場で使えるようになった」という成果は、別物なのです。

研修効果を測る有名なものさしに、カークパトリックの4段階評価という考え方があります。ざっくり言うと、①満足したか、②理解したか、③行動が変わったか、④成果につながったか、という4つの段階で研修を見る枠組みです。

多くの会社は、①のアンケートで止まっています。でも本当に大事なのは③と④、つまり現場の行動と成果です。研修転移とは、この③④まで届かせるための考え方だと思ってください。

学びの7割は「経験」から——70:20:10という考え方

もうひとつ、頭に入れておきたい目安があります。

人材育成の分野では、70:20:10という比率がよく知られています。これは、仕事で成長した人が「どこで学んだか」を調べた結果から生まれた考え方です。

米国の人材開発機関などの解説によれば、この比率は「人は成長に必要なことの約7割を実際の仕事の経験から、2割を上司や同僚との関わりから、そして1割を研修などの座学から学ぶ」ということを表しています。もともとは、成功した管理職への調査から導かれたものだとされています。

数字そのものを厳密に受け取る必要はありません。大事なのは、その比率が示す方向です。

つまり、研修(10)だけをどれだけ磨いても、成長全体の1割にしか手を入れていない。残りの経験(70)と人との関わり(20)を設計してはじめて、研修が活きるということです。

研修を「点」で終わらせず、現場での経験や上司の関わりと「線」でつなぐ。これが、転移を生む育成の骨格になります。

なぜインフラ研修は現場に「転移」しにくいのか?

研修転移は、どんな職種でも課題になります。ただ、インフラの育成には転移をさらに難しくする事情がいくつかあります。

ひとつは、学ぶ範囲が広く、抽象的なこと。Linux、ネットワーク、クラウド、仮想化、監視と守備範囲が広く、しかも目に見えにくい概念が多い。研修で図解しても、現場のどの作業とつながるのかが本人にはピンと来ず、知識が引き出しの奥にしまわれてしまいがちです。

もうひとつは、現場で「試させにくい」こと。設定を一つ間違えるとサービスが止まりかねない領域なので、「まず本番でやってごらん」がやりにくい。学んだことを試す機会がなければ、記憶はどんどん薄れていきます。研修転移が起きにくい典型的な状況です。

そして、教える側の余裕のなさ。現場は日々の運用と障害対応で手一杯で、「研修で何を習ってきたか」を把握して橋渡しする時間がない。研修と現場をつなぐ役が不在のまま、新人だけが宙ぶらりんになるのです。

具体的な場面を想像してみましょう。研修でDNSの仕組みを丁寧に習ったとします。名前解決の流れも、設定ファイルの書き方も理解した。ところが配属先では、しばらくDNSに触る仕事が回ってこない。数ヶ月後にいざ担当になったときには、細かいところをほとんど忘れている——インフラの現場では、こういうことが本当によく起こります。

学ぶ範囲が広いぶん、習ってから使うまでの間隔が開きやすい。この「学びと実践のタイムラグ」こそ、インフラ研修が転移しにくい大きな理由です。

こうした事情が重なると、研修で得た知識は現場の作業と結びつかず、静かに眠っていきます。だからこそインフラの育成では、意識して転移を設計する価値が大きいのです。

転移を生む研修は「前・中・後」で設計する

では、どうすれば転移が起きるのか。ここが本題です。

研修転移の研究では、研修を「研修前・研修中・研修後」の3つのフェーズに分けて考えます。そして、実はカギを握るのは研修中よりも「前」と「後」だとされています。

研修中の中身をいくら磨いても、その前後がすっぽ抜けていると学びは現場に届きません。順に見ていきましょう。

研修前——目的とゴールを本人と上司ですり合わせる

転移は、研修が始まる前から決まりはじめます。

多くの新人は「言われたから研修に来た」という状態で座っています。この状態だと、学びが自分の仕事とつながらないまま流れていきます。

だから研修の前に、その研修で何ができるようになってほしいのかを、本人と現場の上司ですり合わせておく。「配属後にこの作業を任せたいから、この研修を受けてもらう」と、ゴールと現場の仕事を結びつけて伝えるのです。

たとえば、こんな一言を事前に交わすだけでも変わります。

「今回のLinux研修が終わったら、配属先で監視サーバーの初期設定を担当してもらう。だから、ユーザー管理とログの見方は特に意識して学んできてほしい」

これがあると、新人は「使う前提」で研修に臨みます。ゴールから逆算する発想については、インフラ新人が独り立ちするまでを縮める設計でも触れていますので、あわせて読んでみてください。

研修中——「現場の作業」を題材にする

研修中にできる工夫もあります。それは、教材の題材をできるだけ現場の仕事に近づけることです。

教科書どおりの練習問題も大切ですが、それだけだと「試験のための知識」で止まりがちです。可能なら、自社で実際に使っているサーバー構成やネットワーク図を題材にして、演習を組む。

たとえば、Linuxのユーザー管理を教えるなら、架空のコマンド例ではなく、配属先で実際に触るサーバーを想定した設定を演習にする。すると新人の頭のなかで、知識と現場が最初からつながります。

この「知識と実務を結びつける」作業を研修中にやっておくと、配属後に思い出しやすくなります。学びと現場の距離が近いほど、転移は起きやすいのです。

研修後——「使う場」と「振り返り」を先に用意する

そして最も大切なのが、研修後です。

学んだことは、使わなければ忘れます。研修転移の研究でも、研修後に振り返る機会がないと記憶が定着しない、と指摘されています。

だから、研修が終わってから「さて何をやらせようか」と考えるのでは遅い。研修前の段階で、戻ってきたら最初に手を動かす仕事を用意しておくのです。学んだことを、熱が冷めないうちに現場で試させる。

あわせて、短い振り返りの場を設けます。研修から2週間後に、上司や先輩と15分だけ「学んだことを現場でどう使えたか」を話す時間を取る。たったこれだけでも、学びが行動に変わる確率は大きく上がります。

この振り返りは、長い面談である必要はありません。「習ったことのうち、実際に使えたのはどれか」「使ってみて詰まったのはどこか」を軽く聞くだけで十分です。使えた実感があれば自信になりますし、詰まった点は次に手当てすべき課題として見えてきます。

大切なのは、こうした場を「あとで時間があれば」ではなく、研修を組む段階でカレンダーに先に入れておくことです。忙しい現場では、先に予定を押さえておかないと、振り返りはまず流れてしまいます。

この「使う場」と「振り返り」をセットで用意する動きは、育成の進捗を見える化することとも相性がいい。習ったことが実務でどこまで使えているかを可視化する話は、新人研修の進捗を見える化する記事で詳しく書いています。

研修転移を促す方法を、簡単な表にまとめておきましょう。

フェーズ やること ねらい
研修前 上司とゴールをすり合わせる 「使う前提」で学ばせる
研修中 現場の作業を題材に演習する 知識と実務を結びつける
研修後 使う場と振り返りを用意する 学びを行動に定着させる

とくに手をかけるべきは、いちばん右の「研修後」の列だと覚えておいてください。

InfraAcademy をどう使うと転移まで届くのか

ここまでの話は、外部研修でも社内研修でも、eラーニングでも同じように当てはまります。

私たち InfraAcademy は、インフラの基礎を体系立てて学べる教材を提供していますが、大切なのは「受けさせて終わり」にしないことだと考えています。教材はあくまで学びの入り口。そこからどう現場につなぐかが、育成の成否を分けます。

たとえば、Linuxの学習ロードマップネットワークの学習ロードマップに沿って基礎を固めてもらい、そのうえで「学んだこの範囲を、配属後のこの作業で使う」と現場側でひもづける。この一手間が、学びを戦力に変えます。

新人研修そのものの設計を見直したい方は、インフラ未経験の新人研修をどう設計するかや、早期離職を防ぐ視点をまとめたオンボーディング設計の記事も参考になるはずです。

研修と現場のつなぎ方まで含めて相談したい、という企業のご担当者は、InfraAcademyの法人プランからお気軽にお問い合わせください。教材の提供だけでなく、学びを現場に転移させる設計まで、一緒に考えます。

まとめ

最後に、今日の話を振り返っておきましょう。

研修は、受けさせて終わりではありません。学んだことが現場の行動に変わって、はじめて意味を持ちます。これが研修転移という考え方でした。

満足度が高くても、行動が変わらなければ投資は回収できない。そして人の成長の多くは、研修そのものより、現場での経験と人との関わりから生まれます。

だからこそ、研修を「前・中・後」の3フェーズで設計する。とくに、研修前に上司とゴールをすり合わせ、研修後に使う場と振り返りを用意する——この2つが、転移を生む決め手になります。

インフラは範囲が広く、現場で試させにくい分、この設計の効果が大きく出る領域です。次の研修を組むときは、ぜひ「戻ってきたら、まず何をやらせるか」から逆算してみてください。学びは、使ってはじめて力になります。

参考記事

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この記事を書いた人

ryu

InfraAcademy運営 / エンジニア

エンジニア歴10年。Linux、ネットワーク、クラウドを中心に、実務で役立つインフラ技術を初心者にもわかりやすく解説しています。

X: @ryu63614894

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