こんにちは、エンジニアのryuです。
ネットワークを勉強すると、必ず出てくるのがルーティングです。しかし、ルーターが何を見て判断しているのか分かりにくいですよね。
ルーティングとは、宛先IPアドレスから転送経路を決める仕組みです。
同じネットワーク内の通信だけであれば、基本的にルーターは必要ありません。異なるネットワークへデータを届けるときに、ルーターやL3スイッチが道案内を行います。
この記事では、ルーティングテーブル、デフォルトルート、静的・動的ルーティングを初心者向けに解説します。障害時の確認順とコマンドも紹介します。
ルーティングとはデータを目的地へ届ける道案内¶
ルーティングは、宛先までデータを転送する経路を選ぶ処理です。
インターネットや社内環境は、複数のネットワークをルーターで接続しています。
自分のパソコンから別ネットワークのWebサーバーへアクセスすると、データは複数のルーターを経由します。それぞれのルーターが宛先を確認し、次に転送する相手を決めます。
ルーティングを郵便に例える¶
ルーティングは、郵便物を届ける仕組みに例えると理解しやすくなります。
東京から大阪へ手紙を送る場合、送り主は宛先を書いてポストへ投函します。その後、複数の郵便局を経由し、最終的に相手へ届きます。

郵便局では、手紙の宛先を見て次に送る地域を判断します。
ネットワークでも、ルーターがデータに含まれる宛先IPアドレスを確認し、次に送るルーターやインターフェースを選びます。

ただし、ルーターが最初から目的地までの全経路を一度に決めるとは限りません。
各ルーターが経路情報から次の転送先を選び、データを目的地へ近づけます。
同じネットワークと異なるネットワークの通信¶
ルーティングを理解するには、同じネットワーク内の通信と、異なるネットワーク間の通信を分けて考えます。
たとえば、次の2台のPCは同じネットワークに所属しています。
| 機器 | IPアドレス | ネットワーク |
|---|---|---|
| PC1 | 192.168.10.10/24 |
192.168.10.0/24 |
| PC2 | 192.168.10.20/24 |
192.168.10.0/24 |
同じネットワーク内では、ARPで相手のMACアドレスを調べ、スイッチを経由して通信します。
一方、PC2が192.168.20.20/24であれば、所属するネットワークが異なります。
| 機器 | IPアドレス | ネットワーク |
|---|---|---|
| PC1 | 192.168.10.10/24 |
192.168.10.0/24 |
| PC2 | 192.168.20.20/24 |
192.168.20.0/24 |
この場合、PC1はデータを直接PC2へ送れません。デフォルトゲートウェイとして設定されたルーターへ渡し、別ネットワークへの転送を依頼します。
IPアドレスとサブネットから確認したい方は、次の記事も参考にしてください。
【関連記事】IPアドレスとは?仕組み・種類・確認方法を初心者向けに解説
ルーターは宛先IPアドレスを見て転送する¶
ルーティングを行う代表的な機器がルーターです。
L3スイッチやLinuxサーバーも、IP転送を有効にして適切な経路を設定すれば、ルーティングを行えます。

ルーターがデータを受け取ると、宛先IPアドレスを確認します。その後、ルーティングテーブルから一致する経路を探し、次の転送先を決定します。
転送先は、次のルーターであるネクストホップか、出力インターフェースです。
ホップとは¶
データが一台のルーターから次のルーターへ移動することを、1ホップと数えます。
インターネット上のサーバーへ接続するときは、複数のルーターを経由することがあります。tracerouteやtracertを使うと、通信経路上のルーターを確認できます。
LinuxやmacOSでは、次のように実行します。
traceroute example.com
Windowsでは、次のコマンドを利用します。
tracert example.com
途中の機器が応答しない場合は*が表示されますが、必ずしも障害とは限りません。
ルーティングテーブルとは¶
ルーティングテーブルは、宛先ネットワークと転送先を記録した経路表です。

ルーターだけでなく、Windows、Linux、macOSなどの端末もルーティングテーブルを持っています。
ルーティングテーブルには、主に次の情報が含まれます。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 宛先ネットワーク | どのネットワーク向けの経路か |
| プレフィックス長 | 経路が対象とするネットワークの範囲 |
| ネクストホップ | 次に転送するルーターのIPアドレス |
| 出力インターフェース | データを送り出す通信口 |
| メトリック | 複数経路から選ぶための優先度 |
| 経路の種類 | 直結、静的、動的など |
ルーティングテーブルは、192.168.10.0/24のようなネットワーク単位で経路を管理します。
Ciscoルーターでshow ip routeを確認する¶
Cisco系のルーターでは、次のコマンドでIPv4のルーティングテーブルを確認できます。
show ip route
元記事の環境では、次のような結果が表示されています。

先頭の記号から、経路を学習した方法を判断できます。
| コード例 | 経路の種類 |
|---|---|
| C | 直接接続されたネットワーク |
| L | ルーター自身のインターフェースアドレス |
| S | 管理者が設定した静的ルート |
| R | RIPで学習した経路 |
| O | OSPFで学習した経路 |
| D | EIGRPで学習した経路 |
| B | BGPで学習した経路 |
たとえば、次のような表示があるとします。
S 192.168.20.0/24 [1/0] via 10.0.0.2
これは、192.168.20.0/24宛てのデータを、ネクストホップ10.0.0.2へ転送する静的ルートです。
Ciscoルーターの出力を詳しく読みたい方は、次の記事も参考にしてください。
【関連記事】show ip routeコマンドの見方とルーティングテーブルの確認方法
LinuxとWindowsでルーティングテーブルを確認する¶
Linuxでは、ip routeコマンドを使います。
ip route
次のような結果が表示されます。
default via 192.168.1.1 dev eth0
192.168.1.0/24 dev eth0 proto kernel scope link src 192.168.1.10
1行目は、ほかの経路に一致しなかった宛先を192.168.1.1へ送るという意味です。
2行目は、192.168.1.0/24がeth0へ直接接続されており、自分のIPアドレスとして192.168.1.10を利用していることを表します。
Windowsでは、次のコマンドを利用できます。
route print
PowerShellではGet-NetRouteでも確認できます。
まず自分のパソコンで確認すると、デフォルトゲートウェイと同一ネットワーク向けの経路が登録されていることが分かります。
デフォルトルートとは¶
デフォルトルートは、より具体的な経路に一致しない宛先を送るための経路です。
IPv4では0.0.0.0/0、IPv6では::/0と表します。
Linuxの表示例では、次の行がデフォルトルートです。
default via 192.168.1.1 dev eth0
家庭のPCは、自宅LAN以外への通信をルーターへ送り、プロバイダー側へ転送してもらいます。
デフォルトゲートウェイとデフォルトルートは、意味が異なります。
デフォルトゲートウェイは、端末が別ネットワークへ通信するときに利用するルーターです。デフォルトルートは、ルーティングテーブルに登録された0.0.0.0/0などの経路を指します。
【関連記事】デフォルトゲートウェイとは?役割と確認方法を解説
複数の経路が一致したら最長一致で選ぶ¶
宛先IPアドレスが複数の経路に一致することがあります。
この場合、ルーターはプレフィックス長が最も長く、宛先をより細かく指定している経路を優先します。これを最長一致やロンゲストプレフィックスマッチと呼びます。
たとえば、次の2つの経路が登録されているとします。
10.0.0.0/8 via 192.168.1.1
10.10.0.0/16 via 192.168.1.2
宛先が10.10.20.30であれば、どちらの経路にも一致します。
しかし、/16の方が/8より具体的なので、192.168.1.2が選ばれます。
デフォルトルートは/0であり、最も広い経路です。そのため、ほかに一致する経路がない場合にだけ利用されます。
ルーティングテーブルへ経路が登録される方法¶
経路は、直結、静的、動的の3種類に分けられます。
| 経路 | 登録方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 直結経路 | インターフェースへIPを設定する | 直接つながっているネットワーク |
| 静的ルート | 管理者が手動で設定する | 動きが予測しやすい |
| 動的ルート | ルーティングプロトコルで学習する | 構成変更へ自動対応しやすい |
直結経路¶
ルーターのインターフェースへIPアドレスを設定し、通信可能な状態にすると、接続ネットワークがルーティングテーブルへ登録されます。
たとえば、インターフェースに192.168.10.1/24を設定すると、192.168.10.0/24が直結経路になります。
直結していないネットワークへ通信するには、静的ルートか動的ルートが必要です。
静的ルーティング¶
静的ルーティングは、管理者が経路を手動で設定する方法です。
Cisco系のルーターでは、次の形式で設定します。
ip route 宛先ネットワーク サブネットマスク ネクストホップ
192.168.20.0/24を10.0.0.2へ送る場合は、次のようになります。
ip route 192.168.20.0 255.255.255.0 10.0.0.2
小規模な構成や経路を固定したい場合に向きますが、機器が増えると管理が難しくなります。
【関連記事】Ciscoルーターで静的ルートを設定する方法
動的ルーティング¶
動的ルーティングでは、ルーター同士が経路情報を交換します。
ネットワークの追加や障害に応じて、経路を更新できます。
代表的なルーティングプロトコルを整理すると、次のようになります。
| プロトコル | 主な特徴 |
|---|---|
| RIP | ホップ数で経路を選ぶシンプルな方式 |
| OSPF | リンク状態をもとに経路を計算する |
| EIGRP | Cisco環境で利用されてきたプロトコル |
| BGP | 組織やプロバイダー間の経路交換に利用する |
企業ネットワークではOSPF、インターネットの大規模な経路制御ではBGPが重要です。
初心者は、まず静的ルートで経路の考え方を理解し、その後にOSPFなどへ進むとよいでしょう。
ルーティングとスイッチングの違い¶
ルーティングとスイッチングは、どちらもデータを転送する仕組みです。
主な違いは、通信する範囲と判断に使う情報にあります。
| 比較項目 | スイッチング | ルーティング |
|---|---|---|
| 主な範囲 | 同じネットワーク内 | 異なるネットワーク間 |
| 主に見る情報 | MACアドレス | IPアドレス |
| 主な機器 | L2スイッチ | ルーター、L3スイッチ |
| 参照する表 | MACアドレステーブル | ルーティングテーブル |
同じLAN内ではスイッチがMACアドレスを見て転送し、別ネットワークではルーターがIPアドレスを見て転送します。
スイッチングとルーティングは別々の仕組みですが、実際の通信では連携して動いています。
ルーティングで通信できないときの確認方法¶
通信には行きと戻りの経路が必要です。宛先側に戻りの経路がなければ、通信は成立しません。
実務では、次の順番で確認します。
| 順番 | 確認内容 | 主な方法 |
|---|---|---|
| 1 | 自分のIPアドレスとサブネット | ipconfig、ip address |
| 2 | デフォルトゲートウェイ | ipconfig /all、ip route |
| 3 | ゲートウェイまでの通信 | ping |
| 4 | ルーターのインターフェース状態 | show ip interface brief |
| 5 | 宛先ネットワークの経路 | show ip route、ip route |
| 6 | 戻りの経路 | 宛先側ルーターの経路表 |
| 7 | ACLやファイアウォール | 通信制御の設定 |
| 8 | 経路上の停止地点 | traceroute、tracert |
エンジニア歴10年の経験でも、設定を手当たり次第に変えず、pingと経路表を順番に確認することが大切です。
シミュレーターでルーティングを構築してみよう¶
ルーティングは、説明を読むだけでなく、自分でネットワークを構築すると理解しやすくなります。
PC、スイッチ、ルーターを配置し、異なるネットワークへIPアドレスを設定します。その後、静的ルートを追加し、pingの結果がどう変わるか確認してください。
InfraAcademyのネットワーク学習ロードマップでは、IPアドレス、ルーティング、VLAN、動的ルーティング、NAT、ACLを順番に学べます。
独自シミュレーターで機器を配置し、実機なしで構成と通信結果を確認できます。
InfraAcademyのネットワーク学習ロードマップを見る
法人研修でルーティングを実践的に学ぶ¶
未経験者向けの研修では、ルーティングをデータの経路制御と暗記するだけでは不十分です。
静的ルート、戻りの経路、デフォルトルートを比較すると、障害切り分けにもつながります。
InfraAcademy法人プランでは、ネットワークだけでなく、Linux、サーバー構築、AWS、セキュリティなどを一つのサービスで学べます。
受講者は教材、シミュレーター、練習問題を利用でき、管理者は進捗率、完了レッスン、最終学習日、正答率を確認できます。
5IDから利用でき、5IDの場合は月額30,800円・税別です。新人研修、配属前研修、待機期間中の学習などに活用できます。
まとめ¶
ルーティングは、宛先IPアドレスをもとにデータの転送先を決める仕組みです。
ルーターはルーティングテーブルを確認し、ネクストホップや出力インターフェースを選びます。複数の経路が一致する場合は、より具体的なプレフィックスを持つ経路が優先されます。
経路には、直接接続された経路、管理者が設定する静的ルート、OSPFなどで学習する動的ルートがあります。
自分のPCでip routeやroute printを実行し、経路を確認しましょう。
次にシミュレーターで静的ルートを追加し、通信結果を確認しましょう。