こんにちは、インフラエンジニアのryuです。
新人インフラエンジニアの研修を、自社の先輩が手取り足取り教えるべきか、それとも外部のサービスに任せるべきか。研修担当の方なら、一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。
自社で教えれば、うちの現場に合った内容にできます。でも、教える先輩の時間は奪われます。外注すれば体系的に学ばせられますが、費用はかかるし、自社ならではの事情は伝わりにくい。
どちらにも良い面と悪い面があって、なかなか決めきれない。そんな声をよく聞きます。
背景には、深刻な人材不足があります。経済産業省の調査では、IT人材の不足は2030年には最大で約79万人にのぼると試算されています。採用だけに頼るのが難しい以上、未経験者を採って自社で育てる流れは、これからも続いていきます。
だからこそ、研修の「教え方の器」をどう用意するかは、避けて通れないテーマです。今回は、インフラ研修の内製と外注を、費用・負担・効果の3つの軸で比べながら、失敗しない選び方を一緒に整理していきましょう。
そもそも研修の「内製」と「外注」って何が違うの?¶
言葉は聞くけれど、内製と外注の境目はあいまいなまま使われがちです。まずはここを、はっきりさせておきましょう。
ざっくり言えば、教える中身と進行を「誰が持つか」の違いです。自社が持てば内製、外部に預ければ外注。その中間もあります。
内製は「自社の先輩が教える」方式¶
内製とは、研修の企画も講師も、自社の社員がまかなうやり方です。
現場の先輩がテキストを用意し、手順を教え、質問に答える。OJT、つまり実務のなかで教えていく形も、広い意味では内製に入ります。
強みは、自社の環境そのものを教材にできることです。うちが使っているサーバー構成、運用のクセ、よくあるトラブル。教科書には載っていない生きた知識を、そのまま渡せます。
一方で、教える人の力量に大きく左右されます。教え上手な先輩がいる会社なら回りますが、そうでなければ、内容も質もバラバラになりがちです。
外注は「外部の研修やeラーニングに任せる」方式¶
外注は、研修会社の集合研修や、オンラインのeラーニング教材に学習を任せるやり方です。
プロが設計したカリキュラムに沿って、Linuxやネットワークの基礎を順番に学んでいきます。講師の当たり外れが小さく、内容が体系立っているのが魅力です。
近ごろは、動画とハンズオン演習を組み合わせたオンライン教材が主流になってきました。新人が自分のペースで、何度でも繰り返し学べます。
ただし、外部の教材はあくまで一般論です。自社特有の運用ルールや、現場の空気までは教えてくれません。ここは内製で補うしかない部分です。
内製と外注、それぞれのメリット・デメリットを整理する¶
違いが見えてきたところで、良い面と悪い面を並べて比べてみましょう。
判断するには、感覚ではなく材料が要ります。まずは全体像を表で押さえてから、細かく見ていきます。
| 観点 | 内製 | 外注(研修・eラーニング) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 抑えやすい | 受講料がかかる |
| 教える人の負担 | 大きい | 小さい |
| 自社に合った内容 | 反映しやすい | 反映しにくい |
| 教える内容の質 | 人によりばらつく | 安定しやすい |
| 何度も使えるか | 属人的で残りにくい | 教材として繰り返せる |
| 立ち上げの早さ | 準備に時間がかかる | すぐ始められる |
こうして並べると、両者はきれいに裏返しの関係にあると分かります。片方の弱点を、もう片方が補える形です。
内製のメリットとデメリット¶
内製のいちばんの魅力は、自社に最適化できることです。
現場で本当に使う知識だけを、必要な順番で教えられます。理念や仕事の進め方も、研修のなかで自然に伝わっていきます。
費用の面でも、外部に払う受講料は要りません。一度カリキュラムを作れば、翌年以降も使い回せます。
問題は、教える側の負担です。先輩は自分の業務を抱えたまま新人を見ることになり、質問のたびに手が止まります。
さらに、教える人によって内容が食い違うと、新人は混乱します。「Aさんはこう言ったのに、Bさんは違うことを言う」。この状態は、実は多くの現場で起きています。
内製をうまく回すには、教える中身を人任せにせず、共通の土台をそろえておくことが欠かせません。
外注のメリットとデメリット¶
外注の強みは、質の安定と立ち上げの早さです。
体系立ったカリキュラムがすでにあるので、明日からでも学ばせられます。講師の力量に左右されにくく、どの新人にも同じレベルの基礎が身につきます。
教える負担を外に出せるので、現場の先輩は本来の仕事に集中できます。これは、人が足りない現場ほど効いてくる利点です。
弱点は費用と、自社事情の反映しにくさです。集合研修は参加人数分の受講料がかかり、内容も一般的な基礎にとどまります。
一般的な基礎知識を学ぶ研修は外注に向き、自社の業務に密着した知識は内製に向く。両者は競合ではなく、役割分担の関係にある。
この考え方が、選び方のカギになります。
どっちを選ぶ?失敗しない判断基準¶
メリットとデメリットを踏まえて、では自社はどちらを選べばいいのか。判断の軸を3つに絞ってお伝えします。
大事なのは、「良さそうだから」ではなく、自社の状況に照らして決めることです。
判断軸1:教えられる先輩に、時間の余裕はあるか¶
最初に見るべきは、社内に教える余力があるかどうかです。
教え上手な先輩がいて、その人が指導に時間を割ける。この条件がそろうなら、内製は強力です。
逆に、現場が常にひっ迫していて、誰も新人に付きっきりになれないなら、基礎部分は外注に任せたほうが現実的です。無理に内製すると、教える側が疲弊してしまいます。
ここでよくある失敗が、「うちのことは、うちの人間が教えるべきだ」という思い込みです。気持ちは分かりますが、教える人の時間が確保できていなければ、その理想は絵に描いた餅になります。
まず現実の余力を見て、足りない分を外に頼る。この順番で考えると、判断を誤りにくくなります。
判断軸2:教える内容は「基礎」か「自社固有」か¶
次に、教えたい中身の性質を見分けます。
LinuxコマンドやTCP/IPの仕組みといった、どの会社でも通用する基礎は、外部教材に任せるのが効率的です。ここは自社で作り込む価値が薄いところです。
一方、自社のネットワーク構成や運用手順、監視のルールといった固有の知識は、内製でしか教えられません。ここに先輩の時間を使うのが、いちばん効きます。
たとえば、ip a でIPアドレスを確認する操作は教材で学び、自社サーバーへの接続手順は先輩が教える。そんな線引きです。
この見分けは、意外とシンプルです。世の中の入門書や検定に出てくるような内容なら外注、社内の手順書にしか書いていない内容なら内製。そう考えると、迷いが減ります。
先輩の時間は、会社にとって最も貴重な資源のひとつです。その時間を、教材でも学べる基礎に使うのはもったいない。本当に価値が出るのは、自社にしかない知識を渡す場面です。
判断軸3:来年も再来年も、同じ研修を回せるか¶
最後は、継続して使えるかどうかです。
新人は毎年入ってきます。今年たまたま乗り切っても、来年また一から準備するのでは長続きしません。
外部教材なら、一度導入すれば毎年そのまま使えます。内製のノウハウも、テキストや手順書として残しておけば、属人化を防げます。
「今年をどう乗り切るか」だけでなく、「毎年どう回すか」で考えると、選択肢の見え方が変わってきます。
現実的な答えは「組み合わせ」— ハイブリッド研修の作り方¶
ここまで読んで、うすうす気づいた方もいるでしょう。多くの会社にとっての正解は、どちらか一方ではなく、両方を組み合わせることです。
基礎は外部教材で効率よく、自社固有はOJTでじっくり。この役割分担が、費用と質のバランスをいちばん取りやすい形です。
具体的には、独り立ちまでを段階で分け、それぞれに合った手段を割り当てます。イメージを、簡単な設計図で示してみます。
[第1段階] 基礎インプット(1〜2か月)
└ 外部教材/eラーニングで Linux・ネットワーク・クラウドの土台を学ぶ
・自分のペースで反復、講師の負担ゼロ
[第2段階] 手を動かす演習(2〜3か月)
└ 学んだ内容を検証環境で試す。基礎はハンズオン教材、質問対応は先輩
・「分かる」を「できる」に変える段階
[第3段階] 現場OJT(3か月〜)
└ 自社の構成・運用ルール・トラブル対応を先輩が内製で教える
・ここは外注では代替できない、内製の主戦場
こうすると、先輩が付きっきりになる期間は最後の段階に絞れます。負担を軽くしながら、自社ならではの知識はしっかり残せる形です。
ポイントは、いきなり現場に放り込まないことです。基礎と演習で下地を作ってからOJTに進めば、先輩が教える内容は自社固有の部分だけで済みます。教える側の負担が、目に見えて軽くなります。
段階を分けるもうひとつの効果は、新人が迷子になりにくいことです。今の自分がどの段階にいて、次に何を目指すのか。それがはっきりしていると、学ぶ側も安心して前に進めます。
InfraAcademyは、まさにこの「基礎を効率よく」の部分を支えるオンライン学習サービスです。Linux・ネットワーク・クラウドを初心者向けにかみ砕いた講座で、新人が独学任せにならずに土台を固められます。
法人での導入や、自社の研修にどう組み込めるかのご相談は、法人プランのご案内をご覧ください。基礎インプットを外部に預け、先輩の時間を現場OJTに集中させる。そんな設計のお手伝いができます。
新人がどの順番で何を学べばいいのか、その全体像はインフラ学習ロードマップにまとめてあります。研修の骨組みを考えるときの土台にしてください。
まず何から着手するか迷うなら、需要が根強いLinux学習ロードマップから始めるのがおすすめです。
内製と外注、始めるならどっちが先?¶
順番に迷ったら、外注(外部教材)を先に置くのがおすすめです。
基礎の土台さえ先に固まっていれば、その後のOJTがぐっと楽になります。先輩は「そもそもLinuxとは」から教えずに済み、いきなり実務の話に入れるからです。
土台のないままOJTに放り込むと、先輩が基礎から説明する羽目になり、負担がかえって増えます。ここは順番を間違えないようにしたいところです。
研修の効果を、どう見える化するか¶
組み合わせを回し始めたら、効果を確かめる仕組みも欲しくなります。
おすすめは、段階ごとに小さなゴールを決めておくことです。基礎インプットなら「基本的なLinuxコマンドを自力で打てる」、演習なら「検証環境でサーバーを一台構築できる」といった具合です。
到達度が見えると、新人も自分の成長を実感できます。この手ごたえの積み重ねが、早期離職を防ぐうえでも効いてきます。実際、入社後にステップアップの見通しを持てるかどうかは、定着を大きく左右すると指摘されています。
よくある疑問¶
最後に、研修担当の方からよく寄せられる質問に答えておきます。
少人数だと外注は割高になりませんか?¶
集合研修は人数分の受講料がかかるため、少人数だと単価が高く感じられがちです。
その場合は、オンラインのeラーニング型を選ぶと費用を抑えやすくなります。一人からでも始められ、参加人数に比例して跳ね上がることが少ないためです。少人数の会社ほど、この形が向いています。
集合研修は日程を合わせる必要もあり、少人数だと調整の手間が意外とかかります。その点、オンライン型なら新人が入ったタイミングで、すぐに学び始められます。採用が少しずつ進む会社にとっては、この柔軟さも見逃せません。
内製にこだわると、何が起きますか?¶
すべてを内製で背負うと、教える先輩の負担が限界を超えやすくなります。
指導に時間を取られて自分の業務が滞り、教える側が消耗していく。結果として、教える質も下がってしまいます。基礎の部分だけでも外に預けると、この悪循環を断ちやすくなります。より詳しい研修設計の考え方は、新人インフラ研修の設計方法でも解説しています。
どんな資格を目標にすればいいですか?¶
学習の到達点として資格を置くと、目標が具体的になります。
インフラ系なら、LinuxのLPICの勉強法や、ネットワークの基礎を確かめられる基礎からのネットワーク学習あたりが、新人の最初の目標に向いています。合格という分かりやすいゴールが、学習の励みになります。
まとめ¶
インフラ研修の内製と外注は、どちらが正しいという話ではありません。
内製は自社に合った内容を残せる反面、教える負担が大きい。外注は質が安定して立ち上げも早い反面、自社固有の事情までは教えられない。両者はちょうど裏返しの関係にあります。
だからこそ、現実的な答えは組み合わせです。基礎は外部教材で効率よく、自社固有はOJTでじっくり。この役割分担が、費用と質のバランスをいちばん取りやすい形になります。
判断に迷ったら、教える余力があるか、内容は基礎か固有か、来年も回せるか。この3つの軸で自社を見つめ直してみてください。
人材不足がこれだけ続くなか、育てる仕組みを持つ会社ほど強くなっていきます。今日のこの記事が、その第一歩を考えるきっかけになればうれしいです。