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新人インフラ研修のROIはどう測る?効果測定で「コスト」を「投資」に変える方法

こんにちは、インフラエンジニアのryuです。

新人インフラエンジニアの研修に、毎年それなりの費用と時間をかけている。でも、その効果を数字で説明してくださいと言われたら、すぐに答えられるでしょうか。

「なんとなく成長した気がする」「現場からの評判は悪くない」。多くの現場で、研修の評価はこのあたりで止まっているのではないでしょうか。

決して手を抜いているわけではありません。むしろ真面目に研修をやっている会社ほど、効果を測る余裕がないまま次の期がやってくる、というのが実情だと思います。

今回は、研修を「なんとなくの出費」から「説明できる投資」に変えるための、効果測定の考え方を整理してみます。むずかしい統計の話はしません。育てる側の目線で、明日から使える形にしていきます。

研修の効果、ちゃんと測れていますか?

まず、少し立ち止まって考えてみましょう。あなたの会社では、研修が終わったあとに何を見て「よかった」「いまいちだった」と判断しているでしょうか。

「満足度」だけで測ると何を見落とすか

多くの場合、判断材料は研修直後のアンケートです。「満足しましたか」「分かりやすかったですか」。星の数や5段階評価が並び、平均点が高ければ成功、という具合です。

でも、これって健康診断で言えば「気分はどうですか」と聞いているようなものです。気分がよくても、数値に異常が隠れていることはあります。

満足度が高くても、半年後に現場で使えていなければ、その研修は投資として回収できていません。逆に、受講中は退屈でも、あとからじわじわ効いてくる研修もあります。

つまり、満足度だけを見ていると、研修の本当の価値を取りこぼしてしまうのです。

効果は「段階」に分けて見る

ここで大事になるのが、効果を「段階」に分けて見るという発想です。次の章で、その定番の考え方を紹介します。

そもそも研修のROIとは?

効果測定の話に入る前に、言葉をひとつ揃えておきましょう。よく出てくる「ROI」という言葉です。

ROIは「投じたお金に対する見返り」の指標

ROIは Return on Investment の略で、投資した金額に対して、どれだけの利益(見返り)が得られたかを示す指標です。日本語では投資利益率と訳されます。

もともとは財務の言葉です。100万円を投じて120万円の利益を生んだなら、リターンは20万円。これを投資額で割って、ROIは20パーセント、という具合に計算します。

研修に当てはめると、こうなります。研修という「投資」に、費用と時間というコストをかけ、その結果として業務の効率化やミスの減少という「利益」が生まれる。そのバランスを見るのがROIです。

言葉の基礎をもう少し押さえたい方は、ROIとは何かを整理した記事もあわせて読んでみてください。考え方の土台がはっきりします。

家計でたとえるなら、食費や光熱費のような「使ったら消える出費」なのか、資格取得やリフォームのような「あとで返ってくる出費」なのか、という違いに近いかもしれません。

研修を後者、つまり投資として扱うためには、返ってきた分を測る仕組みが要る、というわけです。

なぜ今、インフラ研修でROIが問われるのか

そんな面倒なこと、今までやってこなかったのに、なぜ今さら、と思うかもしれません。

背景には、深刻な人材不足があります。経済産業省の調査では、IT人材は2030年に最大でおよそ79万人不足すると試算されています。採用だけで穴を埋めるのは、もう現実的ではありません。

だからこそ、採った人をいかに早く戦力にするか、つまり育成の効率が経営の関心事になってきました。

そして育成にお金をかける以上、その効果を説明する責任も生まれます。経営層に「来期も研修予算を確保してください」と言うなら、前期の投資が何を生んだかを示せたほうが、話は圧倒的に通りやすいのです。

内製と外注のどちらで研修を組むかで迷っている段階の方は、研修を内製すべきか外注すべきかを比較した記事も参考になります。どちらを選ぶにせよ、効果測定の考え方は共通して使えます。

研修効果を4段階で測る:カークパトリックモデル

では、効果を具体的にどう測るのか。ここで登場するのが、研修評価の世界で長く使われてきた定番のフレームワークです。

それがカークパトリックの4段階評価モデルです。研修の効果を、浅いところから深いところへ、4つのレベルに分けて測るという考え方です。

いきなり全部やろうとすると挫折します。まずは、どのレベルを測っているのかを意識するだけで十分です。4つのレベルを表で整理してみましょう。

レベル 何を測るか 測り方の例 いつ測るか
1 反応 受講者の満足度・手応え 研修直後のアンケート 終了直後
2 学習 知識・スキルの習得度 確認テスト、実技課題 当日〜数日後
3 行動 現場での行動変化 上司の観察、本人の振り返り 3〜6か月後
4 結果 業績や効率への影響 対応時間、ミス件数、独り立ち期間 一定期間後

現場が測れているのは「レベル1」まで

見てのとおり、多くの会社が測っているのはレベル1の「反応」までです。アンケートの満足度ですね。

けれど、投資として本当に見たいのはレベル3の「行動」と、レベル4の「結果」です。研修で学んだことが、現場での行動を変え、最終的に数字を動かしたか。ここが核心です。

満足度が高いことと、現場で成果が出ることは、別の話である。だから両方を、別々に測る。

この一文を、研修設計のメモに書き足しておくだけでも、評価の視点はぐっと引き締まります。

もちろん、レベルが深くなるほど測るのは大変になります。だからこそ、最初から欲張らず、レベル2の確認テストと、レベル4の分かりやすい数字を一つ、というふうに小さく始めるのが現実的です。

満足度が低い研修は、失敗なのか

ここで一つ、勘違いしやすい点にも触れておきます。レベル1の満足度が低いからといって、その研修が失敗だったとは限りません。厳しくて手ごたえのある研修は、その場では評価が辛くなりがちだからです。

逆に、居心地がよくて満足度は高いのに、現場では何も変わらない研修もあります。だから、レベルをまたいで見ることが大切なのです。一つのレベルだけを切り取ると、判断を誤ります。

段階で見るという発想は、料理の味見に似ています。塩加減だけ、火の通りだけ、と一つの要素で全体を決めつけず、いくつかの角度から確かめる。研修の評価も、それと同じ姿勢が向いています。

ROIを計算してみよう

4段階のいちばん奥、レベル4の「結果」をさらに金額に換算したものが、研修のROIです。

計算式はいたってシンプル

これは、カークパトリックの4段階の上に「レベル5=ROI」を乗せた、フィリップスのROIモデルという考え方として知られています。計算式そのものはとてもシンプルです。

研修ROI(%) = (研修で生まれた利益 − 研修コスト) ÷ 研修コスト × 100

研修コスト   = 講座費用 + 教材費 + 受講者と講師の人件費(拘束時間)
研修の利益   = 効率化・ミス削減・早期戦力化などを金額に換算した合計

言葉にすると当たり前ですが、実際にやってみると、数字を置くこと自体が思考の整理になります。

具体例で試算してみる

たとえば、新人5人にオンライン講座を受けさせたケースを、ざっくり見積もってみましょう。あくまで考え方を示すための例です。

項目 内容 金額の例
コスト 講座費用・教材費 50万円
コスト 受講時間の人件費 30万円
コスト合計 80万円
利益 独り立ちが1か月早まった分の人件費 100万円
利益 障害対応の手戻り削減 30万円
利益合計 130万円

この例なら、利益130万円からコスト80万円を引いて、差し引き50万円のプラス。これを80万円で割って100をかけると、ROIはおよそ63パーセントになります。

数字はあくまで仮のものです。でも、こうして並べると議論の土俵が変わります。「なんとなく高い研修費」ではなく、「63パーセントで回っている投資」として語れるようになるのです。

数字は「盛らない」ほうが信頼される

もちろん、利益の金額化には主観が入ります。だから、精密さよりも、毎年同じものさしで測り続けることのほうが大切です。去年と今年を同じ基準で比べられれば、研修改善の効果が見えてきます。

ひとつ気をつけたいのは、数字をよく見せようとしないことです。効果を大きく見積もれば、ROIはいくらでも高くできてしまいます。それでは自分をだますだけです。

むしろ、利益はやや控えめに、コストはもれなく数える。この慎重さが、数字への信頼を生みます。経営層は、話が上手すぎる数字にはかえって疑いを持つものだからです。

そして、ROIが低いとわかったときこそ、改善のチャンスです。どの研修が効いていないのかが見えれば、来期はそこにお金をかけない、という判断ができます。測るとは、やめる勇気を持つことでもあるのです。

効果測定を仕組みにする実践ステップ

考え方は分かった。では、どこから手をつければいいのでしょうか。忙しい現場でも回るように、順番を整理しておきます。

まず「測る指標」を研修の前に決める

いちばんよくある失敗は、研修が終わってから「さて、効果をどう測ろう」と考え始めることです。

これはもう手遅れになりがちです。研修前の状態を記録していなければ、比較のしようがないからです。

だから、指標は必ず研修の前に決めます。しかも、あれもこれもではなく、1つか2つに絞るのがコツです。

たとえば新人インフラ研修なら、次のような指標が現実的です。

  • 基本的な障害の一次対応にかかる時間
  • 先輩に質問する回数(自走できているかの目安)
  • 独り立ちと判断できるまでの日数

これらを研修の前後で記録するだけで、レベル3とレベル4の一端が見えてきます。特別なツールは要りません。表計算ソフト一枚で十分始められます。

「独り立ちまでの期間」を共通のものさしにする

インフラ研修のROIを語るうえで、いちばん分かりやすくて、経営にも響く指標があります。それが独り立ちまでの期間です。

新人が一人で任せられるようになるまでの日数が、研修によって短くなれば、その分だけ先輩の指導コストが減り、本人も早く戦力になります。これは人件費という形で、はっきり金額に換算できます。

裏を返せば、独り立ちを早める研修こそ、ROIの高い研修だと言えます。研修の中身を選ぶときの、シンプルな判断軸にもなります。

このとき、土台となる基礎スキルの学習ルートがそろっていると、独り立ちまでの道のりがぶれません。たとえばLinuxの学習ロードマップのように、順番が整理された教材を軸に据えると、進捗そのものが測りやすくなります。

私たちが運営している学習サービス InfraAcademy でも、Linux・ネットワーク・クラウドといった基礎を、手を動かしながら段階的に学べるように設計しています。研修の効果測定とあわせて使うと、どこでつまずき、どこで伸びたかが見えやすくなります。

新人研修そのものの組み立て方に迷ったら、インフラ新人研修の設計をまとめた記事も土台づくりの参考にしてください。

法人での導入や、自社の研修にどう組み込むかを具体的に相談したい場合は、InfraAcademyの法人プランのご案内から気軽にお問い合わせいただけます。効果測定まで見据えた使い方を、一緒に設計できればと思います。

よくある疑問

最後に、効果測定の話をすると必ず出てくる質問に、いくつか答えておきます。

利益を金額にするのが難しいのですが

「利益の金額化が難しくて、正確な数字にならない」という声。これはそのとおりで、完璧な数字は誰にも出せません。大事なのは正確さより一貫性です。毎年同じ基準で測れば、比較としては十分に役立ちます。

小さな会社でも始められますか

「小さい会社で、そこまで手をかけられない」という声。その場合は、レベル4の指標を1つだけ、たとえば独り立ちまでの日数だけを記録するところから始めましょう。ゼロと1では、雲泥の差があります。

測ること自体が目的化しませんか

「測ること自体が目的になってしまう」という落とし穴にも注意です。測定は、研修をよくするための手段にすぎません。数字を集めるのに疲れて肝心の改善が止まっては、本末転倒です。測った結果を見て、来期の研修をどう変えるか。そこまでを一つのサイクルとして回してこそ、効果測定は意味を持ちます。

資格取得も効果指標にできますか

資格取得を研修の目標に組み込みたい場合は、合格までの期間や合格率も立派な効果指標になります。学習の進め方はLPICの勉強法をまとめた記事などが参考になります。

まとめ

研修の効果測定と聞くと、大がかりで難しそうに感じるかもしれません。でも、本質はとてもシンプルです。

満足度だけで判断せず、行動と結果まで見る。カークパトリックの4段階を意識し、いちばん奥にROIという数字を置く。ただそれだけです。

そして、最初から完璧を目指さないこと。独り立ちまでの日数を一つ測るだけでも、研修は「なんとなくの出費」から「説明できる投資」へと姿を変えます。

数字で語れるようになると、研修は守りのコストではなく、攻めの投資になります。来期の予算も、ぐっと通しやすくなるはずです。

新人が早く一人前になり、育てる側も報われる。そんな好循環を、効果測定という地味な一歩から始めてみませんか。読んでくださって、ありがとうございました。

参考記事

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この記事を書いた人

ryu

InfraAcademy運営 / エンジニア

エンジニア歴10年。Linux、ネットワーク、クラウドを中心に、実務で役立つインフラ技術を初心者にもわかりやすく解説しています。

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